登録されている文字商標は「巨峰」なのですが、商品として「包装用容器」が指定されている例です。中に包装してあるぶどうの販売元を示す手段として、すごくいいアイデアのようにも思えますよね。

 

でも、考えてみてください。商標は商品を誰が製造したのか、誰が販売しているのかなどを示すものですよね。ですから、今回の「巨峰」はあくまでも商品「包装用容器」の名前として中に入っている「ぶどう」の種類を示すものであって、中に入っている「ぶどう」を誰が生産している、誰が販売しているなどを示す標識ではありません。むしろ「包装用容器」を誰が提供しているのかを示す、と考える方が自然です。

 

でも、権利者も、あえて登録されている文字商標と同じ名前を包装用の段ボールに付した方も、中の「ぶどう」の種類を示したかったことは間違いないですよね。つまり、「巨峰ぶどう」という商標は、包装用の段ボールではなく、中に包装された「ぶどう」に使用されていることは明らかです。つまり、包装用容器を区別するために使用されているのではありませんから、商標的使用とは認められなかった事例です。

 

他人のものと区別しなければならない商品やサービスについては、間接的でなく直接的な商品やサービスを指定して権利化しておくこと。弁理士の先生の多くは、聞かない限り注意してくれません。だからこそ、「商標的使用」をどうとらえるか、その感覚が重要なのです。

 

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